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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1153号 判決 1948年12月14日

主文

原判決は破毀する。

本件を廣島高等裁判所に差戻す。

理由

辯護人本間大吉の上告趣意は末尾添附の書面記載のごとくであって、これに對する當裁判所の判斷は次のとおりである。

同第一點について、

記録を調べてみると、原審における被告人の辯護人由井健之助は公判で被告人のため廣江信之を證人として訊問されたき旨請求したところ、原裁判所は右の請求を却下しながら同人に對する第一審裁判所の證人訊問調書中の供述記載を原判決の證據として引用していること明かである。そして記録によれば、本件については「日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律」第一二條第一項但し書に當る場合とも認められないから、原審は右法律第一二條第一項本文の規定に違反して法律上證據とすることのできないものを證據に引用した違法のあること論旨の指摘するとおりである。されば、本件上告は理由があるので他の論點について判斷するまでもなく原判決を破棄すべきものと認め刑事訴訟法第四四八條ノ二に從い主文のとおり判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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